循環器科

心臓病について

はじめに

一口に心臓病といっても、実際の疾患や病態は多岐にわたります。 大まかに分類すると、先天性疾患、小型犬に多い弁膜症、 猫に多い心筋症などが挙げられます。 ここでは、実際に多くみられる症例についてお伝えします。

僧房弁閉鎖不全症

犬、特に小型犬で多く見られる病気です。 心臓にある4つの大きな弁のうち、左心房と左心室の間にある僧房弁がうまく閉じなくなる疾患です 左心室から左心房に血液が逆流しやすくなり、心臓からの拍出量が減少します。 心臓は代償的に収縮力を上げたりすることでしばらく発症しませんが、代償機能が破綻することで うっ血性心不全という状態に陥ります。 うっ血が悪化すると肺にまで影響し、肺の血管から水分が漏出して肺水腫という状態になります。  咳が出る(特に朝方)、散歩で疲れ易くなった、と感じたら早目に動物病院に行きましょう。 呼吸が荒い、咳が止まらない、舌の色が青い、などの症状は緊急性が高い場合があります。すぐに動物病院に行きましょう。

肥大型心筋症

猫に多くみられる病気で、甲状腺機能亢進症と関連している場合もあります。 猫の心筋症の70%以上を占め、ペルシャ、メインクーン、ラグドールなどに多発します。 発症の平均年齢は6~9才ですが、1歳未満の猫で発生が見られることもあります。 主に左心室の壁が内腔に向かって肥大し、左心室腔が狭小化します。 結果として心臓からの拍出量が減少してうっ血性心不全に進行し、肺水腫に至ることがあります。 一方で左心房は拡張し、そこで血栓が形成され易くなります。 血栓が全身に流れて血管に詰まると、四肢の不全麻痺、心筋梗塞などによる突然死など、 様々な症状を生じます。  突然の後肢麻痺、開口呼吸、呼吸困難などが見られたら、すぐに病院に連れて行きましょう。

心臓検査(レントゲン検査)

正常犬の心臓のレントゲン画像です。

僧房弁閉鎖不全症を発症した犬のレントゲン画像です。 心臓の陰影が拡大し、横から撮ったレントゲンでは心臓によって気管が背側に変位しています。 気管が圧迫されることで咳が出ます。 また、肺の一部が白くなっていて、水が貯まっている状態(肺水腫)が示唆されます。 肺水腫では溺れた状態に近くなり、重症例では酸素交換がうまくいかずに舌の色が青紫色になります(チアノーゼ)。

正常猫の心臓のレントゲン画像です。

肥大型心筋症を発症した猫のレントゲン画像です。 あまり心臓の陰影が拡大することはありませんが、重症例では左心房が拡大することで特徴的なハート型(バレンタイン・ハート)の陰影になることがあります。

心電図検査

不整脈の検出に役立ちます。聴診では判断できないような電気的異常なども検出可能です。

超音波検査

心臓の中の血流、弁の動き、壁の動きや厚さなど、様々な情報が得られます。 心臓の疾患は、超音波検査によって確定されることが多いです。 左の画像は、僧房弁閉鎖不全症の犬の超音波画像です。 カラードップラーをかけて僧房弁周囲の乱流を検出しています。